別れの街角
2014年仕事納めの夜、ひのでプロ退社を申し出た石野さんと一子が別れたのは墨田区京島3丁目のキラキラ橘商店街。京成曳舟駅から徒歩5分ほど。
東武亀戸線の踏切。
「君は行かないの? シンガポール世界映画祭」
「えっ?」
「彼に誘われたんじゃないの?」
「あの…」
「うん?」
「私にはたどころさんの仕事がありますから」
「でも、彼は一緒に行ってほしかったんだと思うよ」
「…私は彼のマネージャーじゃありませんし」
「マネージャーとしてじゃない」
「えっ?」
「女性としてだよ」
「あ、あの…」
「鈍いなぁ、気づいてなかったの?」
「じゃあ…ここで」
石野さんが去って行く方向。
いつもの人懐っこい笑みを浮かべながらお手振りをする石野さん。見送る一子の表情が優しく、美しくて。石野さんの胸中はどれほど切なかっただろう。
「とんだバカ野郎だな、俺は」
おそらくかなりの数の遼くん派が、石野さんにグラついた…かもしれない瞬間(笑)。
「それがなかったら…俺と行ってくれたのかよ」
遼の言葉を思い浮かべながら歩く一子の後ろに映っていた印章店と理髪店。
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